いちご畑

ケアと思考と日常について

視線入力機器について

前回、介護と効率性は相反するという話をしたが、介護にもテクノロジーの波は確実に押し寄せている。

今回はそんな介護テクノロジーの一種、視線入力機器について書いてみる。

 

ALSの患者さんは症状が進行すると声が出せなくなる。

声が出せない患者さんが自分の意志を言葉で表現するとき、用いる手段はいくつかある。

大きく分けて、文字盤や口文字といったアナログなものと、ピエゾスイッチや視線入力でパソコンの画面上に文字を表示させるデジタルなものがある。

 

視線入力とは、読んで字のごとくモニター上の文字盤(キーボードのようなもの)やアイコンに視線を合わせて、文字を入力したり、パソコンを操作するものである。

視線入力のために用意する機器は、パソコン本体と、トビー、ピエゾスイッチといったものである。

 

ノートパソコンのモニター下に、トビーと呼ばれるマグネット式の黒いスティック状の機器を取り付ける。トビーはパソコン本体とはUSBで接続される。

Amazonにはゲーム用のトビーが売られている。ALSの方が使っているトビーも同じようなものである。

Tobiiアイトラッカー5

 

文字やアイコンに視線を合わせるだけでは決定とはならないので、決定ボタンとしてピエゾスイッチを用いることになる。

決定ボタンの「押し方」として、手足やその指を使うものと、顔の筋肉を使うものがある。前者では、手足の下にブザーのようなものを置く。後者の場合は、小さくて薄いセンサーを顔の筋肉の動かせる所にテープで貼りつける。

どちらもただ置いたり、貼りつけるだけではダメで、利用者さんが動かせるように、ミリ単位での微調整が必要となる。

いつも入っている利用者さんの場合は、勘で大体わかるのですぐに設置完了できる場合が多いが、たまにいつも通りにやってもうまくいかないことがあり、そんな時はもう大変である。

 

私が一番苦労したのは、足に置くスイッチを使っている利用者さんである。

大小いくつものタオルを、巻いたり折りたたんだりして積み上げ、その上にスイッチを置くのだが、タオルの置き方、スイッチの置き方、足の置き方と、微調整のオンパレードであった。

私は人間的に未熟なので、毎回不機嫌な態度をとっていた。

しかし、不機嫌になると動作が雑になるのでかえって微調整が難しくなり、ドツボにはまっていくのであるが。

 

視線入力機器はとにかくよく固まる。消費するエネルギー量が多いのだろう。

固まったトビーは、タッチパネルを擦るだけで直ることもあれば、パソコンを再起動してアプリケーションソフトを最初から立ち上げて、利用者さんとモニターの距離を調節して…といった、手間を要することもある。

そして当然のことながら、利用者さんの眼の疲労が半端ない。利用者さんは大体、複数種類の点眼薬を併用している。

 

利用者さんにとっても、ヘルパーにとっても骨が折れる視線入力機器であるが、体の動きが制限された中でも、自分の言葉、自分の意志を表現できるという希望を感じる機器でもある。

テクノロジーがもっと発達すれば、スイッチの設置ももっと簡単になるかな?なってほしい!(笑)